現在、ツイッターのトレンドに「上級国民」がランクインしている。これは昨日、東京・池袋で発生した死傷事故でプリウスを運転していた飯塚幸三(87)の影響だ。
飯塚幸三はいわゆる”上級国民”に分類される人物で、逮捕されないのもこれが原因ではないかと批判が殺到している。
【ツイッター】「上級国民」がトレンド入り!
関連ワードには「無罪」「プリウス」「池袋」「マスコミ」と、いずれも飯塚幸三を指す単語となっている。
飯塚幸三は元旧通産省の元工業技術院長で、農機大手クボタの副社長。2015年には、瑞宝(ずいほう)重光章を受章したいわゆる”上級国民”だ。警察は証拠隠滅の恐れがないことなどから逮捕はせず、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで任意捜査している。
また、マスコミは飯塚幸三を”さん付け”しており、ネットでは上級国民だから逮捕もされず、さん付けなのかと叩かれている。
上級国民とかではなく、そもそも逮捕要件を満たしていない可能性も
松畑靖朗弁護士 によると
交通死亡事故の加害者が逮捕されないことは良くあることだと言えます。
犯罪が起きたとき、被疑者を逮捕するには、①逮捕の理由と②逮捕の必要性が要件となります。①逮捕の理由は、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」ということです(刑事訴訟法第199条第1項)。
②逮捕の必要性は、「明らかに逮捕の必要性がないと認めるときは、この限りではない」という形で規定されており(刑事訴訟法第199条第3項但書)、刑事訴訟規則第143条の3では、「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被害者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない」と規定しています。
つまり、逮捕の必要性とは、①逃亡の恐れと、②罪証隠滅の恐れ、があるかどうかによることになり、これらがあるか否かについては、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし総合判断されることになります。
交通死亡事故の場合でも、前科がなく、犯罪を認めて真摯に反省しており、任意保険に加入しており被害弁償も見込まれ、被疑者の年齢が高く、安定した職場ないし家庭環境にあり、酒酔い運転、無免許運転などの悪質性は伴わない交通死亡事故などの場合、上記①と②が明らかになく、逮捕の要件を充たさないものとして逮捕されない場合も良くあることなのです。
弁護士ドットコムより
茅ケ崎事故の90歳女は在宅起訴となった
今回の池袋事故に近い事例として、昨年5年に神奈川・茅ケ崎市で4人をはねて死傷させた無職の90歳女の事故が挙げられる。
茅ケ崎市の国道1号交差点で5月、4人が乗用車にはねられて死傷した事故で、横浜地検は29日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で、同市若松町、無職の女(90)を在宅起訴した。認否は明らかにしていない。
起訴状によると、女は5月28日午前、同市元町の国道1号で乗用車を運転。赤信号にも関わらず加速しながら交差点に進入し、横断歩道を渡っていた女性=当時(57)=をはねて死亡させ、男女3人に全身打撲などの軽傷を負わせた、としている。
女は同日夜に自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕されたが、横浜地裁が地検の勾留請求を却下したため同30日に釈放された。地検は在宅で捜査を進めていた。
つまり、飯塚幸三も在宅起訴となる可能性が高い。逮捕されないからといって、無罪になったわけではない。また、”さん付け”報道なのは飯塚が逮捕されていないからである。逮捕されれば、実名で「飯塚幸三容疑者」と伝えられる。
もし本当に、上級国民は罪が許されるのであれば、日産元会長で他人の金で豪遊しまくったカルロス・ゴーンが逮捕されることはなかったのではないか。あのレベルの大物でも逮捕されていることから、上級国民だから見逃してくれるということは決してないだろう。