ツイッターで「#出版物の総額表示義務化に反対します」がトレンド入り。出版物の総額表示義務化に反対するデモが行われている。
来年3月末をもって消費税額を含めた総額表示の義務免除が終了するが、その際に出版物も表示義務が課されることがほぼ確定した。対応策として、書籍などに挟み込まれているスリップへの総額表示は引き続き有効だが、カバーなどの表示を税込価格に変更することが必要になるという。
書店は今後、全ての出版物のカバーや帯などを付け替える必要があり、また税率が変更するたびにやらなくてはいけなくなるため、体力のない小さな出版社が潰れるなどと非難が殺到している。
出版物の総額表示が義務化に!スリップは引き続き有効、カバー等を税込価格に変更する必要も
2021年3月31日に消費税額を含めた総額表示の義務免除が終了となる際に、出版物も表示義務が課されることがほぼ確定した。
9月11日、日本書籍出版協会と日本雑誌協会が共催した出版社向けの「インボイス等勉強会」で、財務省主税局税制二課の小田真史課長補佐は「基本的に(特例は延長せずに)終わるとの前提で進めてほしい」と説明した。
対応策として現在、書籍などに挟み込まれているスリップのボウズへの総額表示は「引き続き有効」とした。また、スリップへの表示が唯一の対応策ではなく、書籍自体またはカバーへの表示を税込価格に変更すること、そのほか「何らかの形で価格が表示されていれば認められる」と話した。
文化通信社HPより
出版物の総額表示義務化…何が問題?
「#出版物の総額表示義務化に反対します」デモの元ネタとみられるアカウントが解説
めちゃくちゃ簡単に言うと、いま本のカバーに表示されている「本体価格+税」という形の表示はNGになります。つまり、スリップの刷り直し、カバーの刷り直し、シールの貼り付けなどが必要になり、そして店頭在庫の問題もあるので版元も取次も書店も大変です。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
カバー:ブックカバーではなく、最初から本に付けられているもの
スリップ:後述で解説
シール:古本に付いている値札シール
これが来年度からということらしいので、いまから大慌てで準備しても印刷や改装の時間を考えると半年もありません。当然年度末決算の会社も沢山あります。そしてロングセラー書籍の改装用カバーなんかは持ってても廃棄するしかなくなります。理不尽このうえありませんね。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
いま編集作業を進めてる本、重版データを作成してる本、これらのカバーデータも作り直す必要がある可能性が高い。ブックデザイナーの皆さんにも一銭にもならない余計な仕事が乗っかります。財務省の役人は人間としての想像力がまったくないとしか思えない。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
カバーに「本体価格+税」でオッケーという諒解のもと、近年進行していたのがスリップレス化です。少しでも原価を抑え、初版部数が減少するなか価格を維持したいという面を持つ施策で、かなりの版元が舵を切りつつあります。財務省はこういう努力を全部ちゃぶ台返ししようとしているわけです。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
おそらく現在の財務省主計局の見解がそのまま維持されれば、少なからぬ出版物(特に小部数の専門書や刊行から時間が経っているもの)は出荷できなくなります。結果、出版市場の多様性は低下し、それはめぐりめぐって国力の衰退にも繋がります。こんな簡単なことがどうしてわからないんだ。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
重版できた本が重版できなくなる、細々とでもプラス出庫が続いていた本もそのままでは出荷できなくなる、市場規模の縮小に拍車がかかります。これは特定の産業分野に対し、明確にダメージを与える政策です。本読みのひとりとしても絶対に許せない。最後まで戦う。刀折れ矢尽きるまで徹底的にだ。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
ちなみに現行の「本体価格+税」表示でよいという特例は業界団体が2004年に申し入れて決まったもの。消費税を上げるだの上げないだの、1日2日で発言がブレまくる次期総理のもとで、税率が変わるたびにカバー全部刷り直しとか悪夢以外の何物でもありません。
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
感情的な長文をここまで読んでくださってありがとうございます。最後にハッシュタグを置いておきます。ご賛同いただける方のツイートが、今後われわれ出版人の力になります。もちろん、ご自身の意思を最大限に尊重なさってくださいませ。それでは。#出版物の総額表示義務化に反対します
— 平林緑萌 (@moegi_hira) September 15, 2020
▼本の帯にも価格表示しているケースもあり、これらも全て付け替えとなる
本の帯掛け替え遊び
面白いし無限の可能性あるけど
最近全然見んなー#バキ #花山薫 pic.twitter.com/gPMeoSJDop— ひろっぴ (@whztu0528) September 13, 2020
スリップとは
そもそも「スリップのボウズ」って誰だ!?
ってなったんで調べたら⇩の画像のやつのことらしい。
知らなかったw記事に悪意があるのか
広めてる人が理解できてないのか
俺がアホなのかは知らないけど最後の一文までちゃんと読んだ? pic.twitter.com/vV1hhI1muv
— 🐤けもにん@ガンプラー🐥🐣 (@kemonin0817) September 15, 2020
・スリップとは、市販される書籍の中に挟む二つ折りの長細い伝票のこと
・一般的に売り上げカードとも呼ばれ、片面が補充注文用に使える伝票となっている
・一般の読者にとっては書店で購入時に抜かれてしまうが、オンライン書店で書籍を買った時、スリップがついたまま送られてくることも少なくない
・書店へ出荷する本にも最初からスリップを挟まない出版社やレーベルが増加傾向にあり、2017年~2018年で約20社が廃止を決めた
・理由としては、POSを利用するなどして書籍の受発注や流通・需要動向の把握がオンラインでできるようになり必要性が低下したことと、出版不況に対応したコスト削減(スリップの関連経費は1枚2円程度)が挙げられる
出版物の総額表示義務化について、財務省に抗議する動きも
【拡散希望】
出版業界に緊急事態が発生しています。
これを通されたら小さい出版社はのきなみ潰れ、ちょっとマニアックな本はぜんぶ消滅します。
とりあえず財務省のご意見箱に投稿しました。https://t.co/iX5RZPFzbR
ご協力をお願いいたします。#出版物の総額表示義務化に反対します pic.twitter.com/UmmdYftIwu— 似鳥鶏 新刊『生まれつきの花』発売中! (@nitadorikei) September 15, 2020
「以前から言われていたのになんで今更騒いでいるの?」
#出版物の総額表示義務化に反対します のタグを遡ってたらよい知恵袋を見つけた。「以前から言われたのになんで今更騒いでるの?」という疑問に対しても回答があって、とてもわかりやすかった。https://t.co/5tGWBrTLyd
— 眦 (@ilillilllili) September 16, 2020
2021年4月から全ての商品価格が総額表示になる(税込表示になる)ことへの抗議のよう
ですが、疑問点があります。1、2004年〜2013年の期間は、既に出版物も総額表示が義務付けられていましたよね?(総額表示になっていない出版物は2013年〜2021年発行分のみですよね?)
2、総額表示については2004年に義務付けられており、今は特例的な猶予期間に過ぎないのに何故今さら騒ぎになっているのですか?
3、出版社や書店の負担が問題視されていますが、消費税が10%に確定した時点で新規発行物は総額表示に変更し、それ以外の在庫品は少しずつ変更すればよかったのでは? そのための猶予期間であり、10年以上前から分かっていたことなのに、今現在何もしていない人がなぜ急に騒いでいるのですか?
(手間なのも人件費がかかるのも分かります。そうではなくて、なぜ胡座を掻いてきた事実を棚に上げて今さら問題になっているのでしょう。もっと早く騒ぎになっていたのなら筋が通っていますが)4、人件費や手間の話で言えば、出版物以外も同じですよね? 音楽CDなり文房具なり。なぜ出版物だけ騒ぎになっているのですか? 文化伝統、教育は出版物だけではないと思うのですが。
最後に、総額表示のデメリットが多いのは承知していますし反対の声は分かります。
そもそも総額表示は増税による消費運動の低迷を誤魔化すためのものですし。反対意見に異を唱えるのではなくて、「なんで今さら?」「2013年から7年も経っているけど、7年間何をしてきたの?」という疑問です。
回答はリンク先からご覧ください。